要旨
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1982年に発売されたコンパクト・ディスク(CD)システムは、それまでのアナログ・レコードから、音楽情報の蓄積の仕方を大きく変えるイノベーションであり、その後に大きく進むこととなるデジタル化の最初の一歩であった。このCDシステムにおいて重要な役割を担ったのがソニーである。ソニーにとってCDシステムの開発は、ソニーグループの資源をうまく使った例といえる。ソニーの場合は、中央研究所と事業部の研究開発の分担を明確に分けながらも一体となった開発チームを編成した。このチームは、両部門での問題の共有はもちろんのこと、積極的に垣根を越えた取組によって、短期間で半導体レーザの開発を行い、CDプレーヤの製品化を目標に研究開発を進めた。ソニーは半導体レーザの開発において決して先行企業ではなかったものの、その遅れを挽回するための開発目標は極めて具体的であり、トップの大きな意志決定の下で行われたものであった。この逆転劇について考察する。
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