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要旨
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技術起点の社会変革を目指したイノベーション政策では,技術と社会の関係性についての具体的なビジョンの作り込みが求められる。しかし,その複雑性と高度性から政府が担うことは容易ではない。これまでの研究では,主として産業セクターや学術セクターの,技術の変化に対して直接の利害を持つアクターによるネットワーク,または,政府の支援を受けた非営利組織などの中間組織がビジョンの具体化を担いうることが示唆されている。しかし,それを実証した事例の蓄積は限られている。本稿では,製造業をめぐる技術と社会の関係性の変革の具体像を示したIndustrie 4.0の概念に注目し,ドイツにおける同概念の提示と,イノベーション政策への取り込みの過程を,ドイツ連邦政府や関連する中間組織が公表した政策文書に基づき整理し,技術と社会の関係性のビジョンの作り込みの担い手を明らかにした。その結果,第一に,政策立案を行う民間フォーラムの創設や,既存のアカデミー組織への公的助成を通じて,政府が主導して政策立案のネットワークの強化を図っていたこと,第二に,それらの政策立案のネットワークがIndustrie 4.0概念の導出と具体化,さらにはその実装のためのロードマップの作成を担い,政府はそれらを自身の戦略に取り入れていったことがわかった。政府と民間の役割分担が,技術と社会の複雑な関係性を伴う政策形成において観察された。
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