要旨
|
本稿では、一橋大学と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との協力によるNEDOプロジェクトを対象としたイノベーション過程の研究について、その概要といくつかの知見を報告する。第一に、NEDOはサイエンス・リンケージが高い分野、プロジェクトを重点的に支援しており、参加企業の研究開発集約度も高い。第二に、NEDOプロジェクトでは大学や研究機関が連携先として重要であり、また、企業間の水平連携より垂直連携の方がより重要である。NEDO特許は共同発明、共同出願が多く、中でも集中研方式は共同研究や特許技術・ノウハウの共有を促す。水平連携と垂直連携との比較において、研究の連携先として前者の重要性が高まるほど、集中研が選択される可能性が高まる。第三に、NEDOプロジェクトの多くは委託プロジェクトであるが、新規の基礎的研究からのプロジェクト以外は、半分近くの費用を参加企業が負担している。集中研で行う研究開発の場合、NEDOの支援が無いと当該研究開発が中止ないし不実施となる確率が高まり、支援の付加性が高いことが示唆される。(論文本文は、『経済研究』2011年7月号掲載)
|