要旨
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筆者らは、国内外で活動する温州人企業家に着目し、彼らの繁栄と、彼らを取り巻くネットワークの構造や機能、ソーシャル・キャピタルとの関係を考察してきた。本稿は、多くの華僑華人を輩出してきた福建省のなかでも温州同様、改革開放後に海外移住者が急増した福州市の福清および長楽に焦点を当て、彼らのネットワークの構造やソーシャル・キャピタルなどの実態を、温州人のそれと対比的に検討する。少なくとも改革開放後の福州人社会においては、温州人社会の特徴とされる、(1)すぐれた情報伝達特性を持つネットワーク、(2)最低限の生活保障や起業に必要な経営資源獲得手段として機能する豊かなソーシャル・キャピタル、(3)企業家精神を最重要視する規範のいずれもが相対的に脆弱であることが示唆される。
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