要旨
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東レは1971年にアクリル(PAN)系炭素繊維の商品化に成功して以来、炭素繊維市場の9割を占めるPAN系炭素繊維分野で世界的な競争力を持つ。同社は独自技術をもとに原糸から中間製品、加工品までを垂直統合し、現在は航空機向けやその他産業用途の需要拡大の追い風も受けている。ただ、炭素繊維は、次世代先端材料として期待が高い反面、多大な設備投資が必要な割に大量生産が困難という高コスト構造にあり、供給過剰のリスクもつきまとう。また、取引形態の多様化に伴い、原糸顧客の利益に反することなくいかに独自の川下展開をするかといった問題も抱えている。
東レの炭素繊維の技術開発の経路と、事業戦略上の課題を考える。
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