要旨
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2003年に発売されたシチズン時計のフルメタル電波腕時計は「クオーツ以来のイノベーション」といわれている。同社製品の平均単価を2割以上上昇させて業績を牽引する主力商品となっただけではなく、スイス勢を中心とする高級腕時計に席捲されていた国内の腕時計産業全体の活性化にもつながったからである。しかし、その製品開発、そして事業化の道のりは決して平坦なものではなかった。技術面では、金属ケースのなかでも電波をキャッチできる高精度・小型のアンテナ開発が大きな課題であった。さらに電波腕時計の普及に欠かせない標準電波送信インフラが未整備であったうえに、腕時計自体ではなく、インフラ側で精度を担保する電波腕時計は、競合他社はもちろん、シチズン時計社内でも腕時計の常識に反すると見られており、組織内での合意形成も必要であった。本ケースでは同社の電波腕時計の事業化と市場形成について、国内ライバル社の動きと比較しつつ、その足跡をたどる。
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