著作分類
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IIRワーキングペーパー
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著者
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前田高宏:長岡貞男
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論文タイトル
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ノートパソコンの技術進歩とその源泉 :価格比較サイトデータに基づくヘドニック法による分析
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機関名
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一橋大学イノベーション研究センター
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ナンバー
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WP#13-01
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公開日
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2013/01/15
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要旨
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本稿では、2006年~2012年の期間における、ノートパソコンの技術進歩(以下では品質向上)とその源泉について、価格比較サイトのデータから新たなパネルデータを構築し、ヘドニック法による分析を行う。ヘドニック法による品質調整済み価格動向(=名目価格変化率-技術進歩率(品質上昇率))の計測は、プロダクト・イノベーションの源泉を明らかにする上で非常に重要な道具であるが、他方で欠落変数が重要な影響を与え得ることが従来から指摘されている(Triplett (2004))。本研究では、ユーザー・レビューや製品のシリーズ情報などによって欠落変数を補足することが、技術進歩の計測にどのような影響を与えるか分析するとともに、ノートパソコンをホームノート、モバイルノートおよびネットブックに分けて、技術進歩の方向やその源泉の分析を行った。分析の結果、以下が明らかになった。
・価格比較サイトデータに基づくヘドニック法による推計結果は、その大半が合理的な結果となっており、また、ノートパソコンの種類によって、品質向上への消費者から見た効果が大きい性能が異なり、技術進歩の方向も異なってきたことも確認された。
・従来の計量分析で欠落していたが、相対評価しか得られない性能変数を導入した場合、それと絶対評価の変数との相関(製品間のクロスセクション)がプラスであれば、推計される技術進歩の程度は小さくなる。しかし、両者の相関が負である場合には、技術進歩の過小評価の傾向は是正される。PCのデータでは、デザインや使い勝手などに関するユーザーの評価データを新たに加えることは後者の効果をもたらすことが示された。
・企業は消費者がどのような方向の技術進歩を評価するかを見通しながら研究開発を行うので、消費者の評価が高まる方向でより技術進歩が早く、その結果、全期間推計と隣接法を比較した場合、後者の方が計測される技術進歩の程度は大きいと予想される。これらの予想も支持された。
・製品機能のCPUやOSへの統合によってこれらの基幹部品が技術進歩の源泉としてより重要になると、イノベーションの担い手として完成品メーカーの重要性が低下する。その低下が大きい場合、完成品メーカーのシリーズの更新に伴って、シリーズに体化される技術進歩(ただし、重量の削減などを除く内部機能の向上)の価値は低下し、また同時にヘドニック回帰分析に製品のシリーズを導入することによって計測される技術進歩の大きさは減少することが予想される。これらの予想も支持された。
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備考
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参考URL
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ラベル
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経営学, イノベーションの経済分析, イノベーションの計測
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登録日
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2013/01/15
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