要旨
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富士通の開発者が、他社より早くArFレジスト材料の開発に成功した理由には、アクリル樹脂に集中した点と、トレードオフ関係にある様々な技術要件を一度に解決しようとした点が挙げられる。これは開発者が当初から最終的な工業化、製品化を強く意識していたことが背景にある。中央研究所ではなく事業部内の研究所で開発を進めたことで、別材料の工業化で苦労する他の開発者と接する機会も多く、また事業化や収益化に対する圧力もあった。通常、事業部における短期的な事業化圧力はイノベーションを削ぐといわれるが、しかしこの事例では事業化を念頭に置くからこそ早期に顕在化する様々な技術的制約がむしろ画期的なアイデアの創出を促した。
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