要旨
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「科学技術イノベーション政策の科学」の鍵となるのは、政策形成と政策研究をつなぐことである。「科学技術イノベーション政策の科学」は、単に定量的なモデルを作るのではなく、多様なアプローチによる政策メニューの提言を目指すものである。
政策形成及び政策研究は、そのプロセスの基礎となる思考様式、求められるタイミングやスピードも異なる。解決するべき課題を共有し、一旦、知識をバラバラにして、一緒に悩みながら構成していくような粘り強い「知的挑戦」が必要になる。これら思考様式の違いは、人材のキャリア形成の違いにも根ざしているが、官僚機構、大学、公的シンクタンク等における人材像は変化しつつある。
政策形成と政策研究の間の相互理解に至るまでの過程は単純では無い。①無視→②懇談→③過度の期待と同床異夢→④反発→⑤相互理解というようなプロセスを辿ることが多い。
政策形成と政策研究をつなぐための活動は、本学会、政府関係機関、大学等で行われている。また、海外では、政府機関に研究者を派遣するフェローシップ制度等も導入されている。
自らが属する組織や研究コミュニティにおいて一定のレビューをした上で、正面から議論をすることが、両者の違いを乗り越える出発点である。既存の政策の正当化のために「科学技術イノベーション政策の科学」があるのではなく、政策の合理性と透明性の向上を目指した不断の取組であることを認識する必要がある。
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