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著作分類 IIRワーキングペーパー
著者 本庄裕司:長岡貞男:中村健太:清水由美
論文タイトル バイオベンチャーの科学的源泉と成長に向けての課題―「2012年バイオベンチャー統計調査」にもとづいて―
機関名 一橋大学イノベーション研究センター
ナンバー WP#13-22
公開日 2014/02/10
要旨 本稿では,「2012年バイオベンチャー統計調査」(2012年度調査)にもとづいて,日本のバイオベンチャーにおける科学的源泉と企業成長に向けての課題に注目した調査および分析結果を報告する.2012年度調査では,まず調査対象企業の企業数を集計し,これにもとづく日本におけるバイオベンチャーの動向を時系列的に把握する.また,バイオベンチャーの株式公開について,企業タイプ別に新たな分析を試みる.さらに,2011年度調査に引き続いてバイオベンチャーのコア技術の源泉を調査するとともに,コア技術の技術移転の方法について,コア技術の開発者がその企業に異動し自ら開発の実施する場合を調査し,加えて,日本のバイオベンチャーの多くの割合を占める「研究支援」あるいは「受託サービス」といった研究支援サービスを事業分野とする企業の顧客について新たに調査している. 本稿で得られた知見は以下のとおりである. (1) 本統計調査の対象である広義のバイオベンチャー(ただし,商業を主たる業務とする企業,非営利を含む)は,2000年に約370社存在していたが,2000年代の前半に急増し,2007-2008年ごろに約730社程度となった.しかし,近年は設立数と退出数がほぼ拮抗している. (2) 日本のバイオベンチャーは少数ながらも着実に株式公開をはたしている.株式公開した企業のほとんどがマザーズやジャスダックといった新興市場で公開しており,こうした新興市場の整備がバイオベンチャーに新たな資金調達の道を開いたと考えられる.また,株式公開の決定要因の実証分析によると,研究開発集約度の高い企業や医薬品を事業分野とする企業が株式公開をはたしやすい傾向がみられており,さらに,これらの要因をコントロールしても大学発ベンチャーは株式公開をはたしやすい.なお、分析対象のサンプルではM&Aの件数は少ない. (3) バイオベンチャーの科学的源泉について, 2011年調査を拡充した結果が得られた.日本のバイオベンチャーのコア技術の出所(設立時)は,大学や公的研究機関が半数近くを占めており,また,約7割のコア技術の開発はその創造者がこうし組織に所属していた時に行われている. バイオ関連分野では,大学や公的研究機関といった科学的源泉がバイオベンチャーの誕生に重要な役割をはたしていることが改めて確認された.なお,コア技術が大学出所の場合であってもそのうち約4割が「大学発ベンチャー」に分類されていないことから,「大学発ベンチャー」は,コア技術の提供者としての大学や公的研究機関の役割を過小評価していることも判明した. (4) バイオベンチャーへのコア技術の技術移転の方法について,コア技術の開発者がその企業に異動し自ら開発を実施するケースを新たに調査したが,このようなケースは実際にとても少ない. コア技術を開発した社外研究者が役員として経営に参画,コア技術を開発した社外研究者がアドバイザーとして経営を助言する割合も相対的に低い.他方で,コア技術の利用・開発に関連した技術指導(ノウハウの移転)を利用する企業は8割近くを占めており,しかも半数近くが非常に有効と評価している. 効率的なコア技術の移転は大変重要であるが,バイオベンチャーではその開発者による人的関与と切り離された形で経営されており,技術と経営にはそれぞれ別の資源が組み合わせられていることが示唆される. (5) 日本のバイオベンチャーは,売上高でみると全体の約4割の企業が「研究支援」あるいは「受託サービス」といった研究支援サービスに分類される.2012年調査では,こうした企業がどのような分野の顧客から受託しているかについて新たに調査した.その結果,医療・健康(医薬品含む)が回答企業の約6割を占めており,大学・公的研究機関からの研究支援・受託サービスも3割を占めている.日本のバイオベンチャーは,医療・健康(医薬品含む)を事業分野とする企業の割合が直接あるいは間接に含めて約7割と高い水準にあると推察される.また,バイオベンチャーは大学などの研究機関を支えるインフラとして重要であることも判明した.
備考
参考URL
ラベル 経済学, 産学官連携
登録日 2014/02/10

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