要旨
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昨今、日本企業を取り巻く経営環境は複雑性と不確実性が増大している。このような環境下ではどのような組織プロセスを通じた環境適応行動が事業成果を上げているのだろうか。本稿では、日本企業の事業部(BU:Business Unit)に注目し、2010年度と2012年度に23社221BUについて質問票調査を行った結果をもとに、BUが直面する経営環境や戦略行動と、経営成果や戦略計画との関係を分析・検討してみると、次の4点が明らかになった。①絶対的な収益水準や相対的な事業成果の優位性は、経営環境や市場地位の差だけでは十分に説明できない、②BU間の優位性格差は、戦略志向性の違いに起因する環境適応のあり方の差によって説明できる、③戦略志向性が収益格差にもたらす影響は、環境変動の大きさで異なる場合がある、④戦略志向性には、計画プロセスの考慮によって改善する余地が存在する─である。昨今の不確実で複雑化する環境下における日本企業のBUの事前計画は、事後の環境適応を阻害し拘束するものではなく、むしろ事後の環境適応を促進する可能性を持つことを今回の分析結果は示唆している。
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