要旨
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製品とサービスの高付加価値化は日本企業にとって避けて通れない。科学技術力は、そこでの重要な基盤の1つである。本稿は、日本企業の研究開発の効率性と資源配分という2つの視点から、日本の科学技術力を考える。効率性という観点では、日本的経営が賛美されていた1980年代にはすでに日本企業の研究開発の効率性の低下は始まっていたことが明らかにされる。また資源配分に関しては、日本企業は基礎研究の割合をわずかながら上昇させる一方で、大学がその資源を基礎研究から、応用・開発研究へと移してきている姿が浮かび上がる。企業は基礎研究の割合を低下させ、大学がその割合を高めているアメリカとは対照的な傾向である。知識の普遍化という観点から、この動きは日本のイノベーション・システムに大きな影響を与える可能性があると論じる。
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