要旨
|
イギリスのクリエイティブ産業政策は、世界的に見ても、最も成功した政策のひとつである。この政策は、ブレア政権期[1997-2007]に始まり、ブラウン政権期[2007-2010]までには、科学技術政策とともに、イノベーション政策として機能するようになった。本稿の目的は、その成功要因を明らかにすることである。クリエイティブ産業政策の進展プロセスを分析した結果、つぎの3つの点がわかった。第一に、クリエイティブ産業の統計が整備され、市場規模や貿易収支など、その経済的な価値がはじめて明示されたことである。こうして、イノベーションの実現における創造性やクリエイティブ産業の役割に注目が集まり、その政策への客観的な評価も可能になった。第二に、デザインセクターを先導役とする、クリエイティブ産業と他の産業との協働を促進する政策の実施である。両産業間では相乗効果がうまれ、クリエイティブ産業はさらなる成長を遂げた。第三に、創造性やクリエイティブ産業の役割を高める社会的な基盤の整備である。大学を中心とする研究・教育機関にも、イノベーション政策としてのクリエイティブ産業政策が浸透し、政府の方針が研究や教育にも反映されるようになった。イギリスのクリエイティブ産業政策は、イノベーションを希求するすべての国や企業に大きな示唆を与えている。
|