詳細情報

BACK

著作分類 IIRワーキングペーパー
著者 本庄裕司:長岡貞男:中村健太:清水由美
論文タイトル バイオスタートアップの新規株式公開と資金調達
機関名 一橋大学イノベーション研究センター
ナンバー WP#15-01
公開日 2015/01/05
要旨 本稿は,バイオテクノロジー分野におけるスタートアップ期の企業(以下,「バイオスタートアップ」と呼ぶ)のうち,とくに,株式公開企業 (public firm) を対象に,ベンチャーキャピタル (venture capital; VC) からの資金調達および新規株式公開 (initial public offering; IPO) を通じた資金調達の実態を分析する.本稿で得られた知見は以下のとおりである. (1) バイオテクノロジー分野では,研究開発投資の規模が大きく,その不確実性が大きいことから,VCはバイオスタートアップの資金調達に大きな役割をはたしており,また,比較的に初期の段階からVCによる投資がみられている.(2) 一般的にIPOは市況の影響を受けやすいが,バイオスタートアップのIPOは市況と関係なく継続的にみられている.ただし,(株価)時価総額は市況によって大きく変動しており,2002年から2003年および2012年後半から2013年は他の時期よりも相対的に高い時価総額となっている.(3) バイオスタートアップへの投資は規模が大きくリスクも高いことから,VCがバイオスタートアップに投資する場合,段階的投資やシンジケーションを利用する傾向がみられている.バイオスタートアップは平均5回の投資ラウンドを経験しており,また,平均15社のVCがバイオスタートアップの投資に参加している.ただし,投資ラウンド数やシンジケーションの大きさが必ずしも良好な時価総額につながるとは限らない.(4) IPOは,バイオスタートアップへの投資に対する資金回収および株式市場へのアクセスを通じた資産規模拡大の機会として機能している.(5) バイオスタートアップは,IPOを通じて研究開発を拡大するが,IPOが短期的な売上高の改善につながっていない. 日本の新興市場では,赤字であっても成長性のある企業のIPOを認めることで,こうした企業の市場での資金調達やVCによる投資の回収につながっており,こうした点で新興市場の役割が機能している.他方,バイオスタートアップについて,投資ラウンド数やシンジケーションの大きさが必ずしも良好な時価総額につながらないことや,市況と関係なくIPOがみられることは,日本のVCによる投資能力の限界を示唆している.将来的に,バイオテクノロジー分野で効率的にイノベーションを実現していくためには,リスクを分散できる産業組織の進化が大きな鍵を握る.そのためには,バイオスタートアップおよびリスクキャピタルの相互の拡大が求められる.こうした好循環を形成していくうで,バイオスタートアップに資金を提供するVCの能力の強化は重要な役割をはたすと考えられる.
備考
参考URL
ラベル 経営学
登録日 2015/01/05

PDF DOWNLOAD

BACK