要旨
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この研究の目的はR&D投資減税,公的R&D支出といった科学技術政策の経済成長への影響を,R&D資本の公共財的な性質を組み込んだ一般均衡動学モデルにより評価することにある.R&D資本投資及び資本ストックのデータを構築し,SNAのデータを2008SNAの定義に整理した上で, 2部門動学的一般均衡モデルの構造パラメーターを推計,またはカリブレートして数値モデル化した.最終財生産,R&D生産の生産関数を用いた成長会計からは,1990年代以降,最終財生産とR&D生産のTFP成長率が共に低下していたことが示された.景気循環会計からは,最終財生産の効率性ウェッジは1990 年代以降の日本経済に対する影響は相対的に弱く,むしろ物的資本投資ウェッジ,労働投入ウェッジが大きな影響力を持ったことが明らかとなった.一方,R&D 生産の効率性ウェッジ及びR&D 投資ウェッジはR&D 生産の変動に大きな影響を示した.政策実験の結果からは,R&D 税額控除制度がなかった場合に最終財生産,R&D生産,消費共に低下していたことが示された.公的R&Dのスピルオーバー効果の役割をモデルに組み込んで政策シミュレーションを行った結果,公的 R&D投資の増加がR&D生産をかなり押し上げ,また,最終財部門の生産,家計の消費についても増加させることを明らかになった.
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