要旨
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本稿は,静岡県浜松市北区三ヶ日町を舞台に生じた地域イノベーションの事例を検討するものである。同町の地域課題とは,ミカン産地としてのブランド化が生み出してきた廃棄ミカンの存在であった。その問題克服に関わったのが,同町で食肉卸業に携わってきた株式会社フードランドを経営する中村健二氏であった。異業種の視点や技術の応用を通じて,それまで本格化しなかった廃棄ミカンの活用事業が進められたのである。多くの産地ではブランド化が目指されており,その結果,規格外品の発生は多かれ少なかれ今日の産地一般に共通して観察される課題となっている。その規格外品の活用に至るまでにどのような問題が発生し,いかなる対処がありえるのかを示している点で,本事例は同様の課題を抱えるブランド産地に示唆的な事例であると思われる。さらに,B級品ビジネスに係る事例において必ずしも積極的な光が当てられてこなかった,産地内におけるA級品とB級品をめぐる緊張関係や,アウトサイダーと主流層との関係性というイシューがむしろ重要になっていることも本事例の特徴である。その点において面的な現象としての地域イノベーションを検討するにあたっても有益な事例であろう。
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