要旨
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本論文では、知識の問題に取り組んできた人々とその仕事を通じて、創造的転回について検討した。創造的転回とは、知識の問題の解決を前提する、情報技術の進歩への適応のプロセスである。第一に、知識の問題とは、主観性の立場の対立を通じて発見できる、認識と認識における時間の問題であり、言葉やものに内在する経験、意味、合理性、より社会的には倫理と権力の問題である。第二に、その解決に向けた動きを先導してきたのは、啓蒙の時代に、ギリシャから継承した見方や考え方の限界や矛盾を問題化した人々の活動や仕事であり、この運動は、啓蒙の時代が体験された場所にいた人々を中心に進んだ。第三に、彼らが観察し、描写したのは、啓蒙の時の民主化による、知識創造のパラダイムシフトと呼ぶことのできる二つの社会的プロセスであり、21世紀になると、欧州の政府、産業、大学には、創造的転回を企てる動きも観察できるようになった。創造的転回は、これまでの「描写された」イノベーションとは異なる、「体験された」イノベーション、つまり、創造という社会的プロセスの前提である。
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