要旨
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ヤマコ武田商店は、マグロを塩竃魚市場で買い付け、解体加工し、仲卸を通さずに小売店に産地直送する事業を行っている企業である。東日本大震災からの復興過程において、ヤマコ武田商店では急速冷凍機械を用いたマグロのタイムシフトビジネスを開発した。旬であり豊漁期でもある秋に獲れたマグロを解体後に冷凍し、最も高く売れる12月に提供することを可能とした。この他にも多様なアイディアを想起する武田社長の経営は、万全・完全でないものを活用し、先入観を排して思考するという特徴がある。また、ヤマコ武田商店の成長過程から得られた政策的インプリケーションとしては、地域振興の政策として地域固有の資源を使うことを指定する施策が水産業者・水産加工業者に過大な経営リスクを負わせる可能性があることが示唆された。むしろ、行政は小規模企業がリスクヘッジを進めるための施策や、利害関係にない企業間の学習を取り持つ施策に重点を置くべきであろう。
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