要旨
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イノベーションの創出は地域経済を活性化しうるが,当該地域の持続的な発展を必ずしも保証しない.むしろ地域は,生み出したイノベーションとそれに伴う成功体験に縛られることで,環境変化に適応していくことができず,衰退していく可能性もある.では,そうした問題に直面した地域は,次なる成長に向けた取り組みをいかに進めていくのであろうか.本稿は,鯖江市眼鏡産地の事例をもとに,この問題を考察する.当該産地は,チタンフレームの量産技術の開発に成功したことで成長を遂げたものの,その後に中国企業の製造技術が向上したことで技術的な優位性が弱まり,縮小傾向が続いている.このような危機的状況を脱するために,当該産地は,産地ブランド化という新たな取り組みをスタートさせた.本稿では,この産地ブランド化の取り組みに至る経緯や,その課題を見ていくことで,地域イノベーションという過去の成功体験に地域がいかに縛られ,また一方でそこからいかに脱却し,新たな取り組みを進めていくことができるのかを考察する.
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