要旨
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従来、日本のソフトウェア分野のスタートアップは渋谷・六本木を中心に集積していたが、近年は、AI系スタートアップの集積が本郷3丁目周辺に見られている。起業家OBとの交流によって学生発ベンチャーが立ち上がる本郷エリアには、スタートアップのエコシステムが出来上がりつつある。しかし、これは単に学生が優秀だからというだけでは説明がつかないものがある。スタートアップに人材を供給する東京大学の学生は本来保守的で、スタートアップは進路選択の対象ではなかったからである。この背景には、20年近くに及ぶ東京大学内部、そして起業家OBたちによる半ば草の根のスタートアップ支援活動と、それを支えた、大学内部のイントラプレナーシップが存在する。本論文は、これらの歴史的経緯を記述し、これからの東京がスタートアップの集積地として発展していくために忘れてはならない視点を提示する。
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