要旨
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人口400人にも満たない田舎町に、世界から感謝の手紙が届く義肢装具会社が存在する。中村ブレイスである。創業者である中村俊郎は1974年に創業し、従来の義肢装具製作の世界に新素材や新技術を取り入れ、新たな義肢装具や補正具を独自に開発し、国内有数の義肢装具会社に成長させた。同社に通底するのは、義肢装具や補正具を必要とする顧客の人生の大切な部分にかかわり、高い技術力を通じて日々の生活を支えるという考え方である。大きな夢を揚げつつも、義肢装具や補正具の製作を通じて愚直に顧客が抱える課題の解決に取り組む同社の姿勢は、短期的な合理性を追求する経営に異を唱える経営でもある。なぜ過疎の町で創業し、業界でも後発メーカーであった同社が、日本有数の義肢装具会社として成長できたのか。その理由を本ケースでは考える。
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