著作分類
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IIRワーキングペーパー
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著者
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市川類
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論文タイトル
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「何故、日本のデジタルイノベーションは遅れているのか」 ~デジタルイノベーションシステムの比較制度分析からみた日本企業・政府の構造的課題~
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機関名
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一橋大学イノベーション研究センター
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ナンバー
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WP#20-16
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公開日
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2020/12/11
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要旨
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社会におけるデジタル技術の重要性が高まり、デジタルトランスフォーメーション(DX)への関心が高まる中、日本は、民間、政府ともにデジタル化が遅れていると言われる。それでは、日本のデジタル化は、イノベーションの観点から、どのような意味で遅れており、また、それは、どのような制度的・構造的な問題に依るものなのであろうか。
このような問題意識の下、本ワーキングペーパーでは、改めて「デジタルイノベーション」を定義・分類をした上で、それを取り巻く「デジタルイノベーションシステム(DIS)」の観点から、日米の情報システム投資及びそれによるデジタルイノベーションを巡る制度的構造について、比較制度分析を行った。
具体的には、J型企業/A型企業、モジュラー型/インテグラル型などのこれまでの日米の比較制度分析に関連する枠組みを、情報システム分野に拡張し、情報システム分野における日米の構造的な差異に係る各種指摘事項と併せて解釈・分析を行った。これにより、J型企業・システムにおいては、これまでの経路依存的な経済システムの進化により、CIOの低い役割/組織内調整の強み、統合型システムでの強み/パッケージ化(モジュール化)の弱み、デジタル人材の過小採用と外部委託・多層下請構造などがそれぞれ相互補完的な関係として安定均衡的な構造になっていることを明らかにした。また、この結果、J型企業においては、デジタルイノベーションとして、「効率化投資(守りのIT投資)」には一定の優位を有する面はあるものの、「DX(攻めのIT投資)」については構造的な弱みを有しており、今後、J型企業・システムが、社会のデジタル化の進展に対応していくためには、デジタル人材の内部化・流動化を進めていくことが鍵であることを示した。
さらに、これらの比較制度分析を踏まえて、日米両政府のデジタル化(電子政府)に係る取組について比較評価を行った。具体的には、日米両国政府ともに巨大な組織連複合体であり、組織の縦割りなど電子政府推進における不利な条件を抱えていることを指摘した上で、それぞれDISの中でJ型企業、A型企業の特質を受け継ぎつつも、両国政府とも政府組織であるがゆえに外部委託構造という問題を抱えていることを明らかにした。その上で、米国政府では、社会のデジタル化の進展に対応すべく、多様なデジタル人材の採用を試行していること等を参考に、今後、日本政府においても、現在検討中のデジタル庁においては、自ら積極的にデジタル人材を採用し、政府全体でのガバナンスに活用するとともに、日本のDIS全体におけるデジタル人材の流動化のハブとしての役割を果たすことが期待される旨指摘した。
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備考
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参考URL
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ラベル
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イノベーション政策, イノベーション・プロセス, デジタルイノベーション
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登録日
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2020/12/11
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