要旨
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新たな産業革命であるといわれるカーボンニュートラルは、世界各国がその実現に向け、グリーン成長戦略に取り組んでいる。しかしながら、この「カーボンニュートラル革命」は、本当に過去の産業革命がもたらしたような経済成長を引き起こすのだろうか。本論文では、カーボンニュートラル革命について、過去との比較の下、特に産業転換、経済波及という2つのイノベーションの観点から考察する。カーボンニュートラル革命では、エネルギーシステムの急速な代替を目的とした比較的短期で集中的なイノベーションが推進されるがゆえに、過去の産業革命とは異なり、経済成長への効果は、理論上限定的であることを示す。これは、イノベーションの経済効果が、従来の外部不経済とされた環境価値の向上に補填されるためであるが、その上での経済波及効果の拡大に向けた課題についても考察する。
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